あなたの
器に満ちる
水の
一滴となって
注がれてゆく
うたが聴こえるか
裸木に止まった
小鳥から
冴え冴えとした
大気に放たれた
雪の後
長靴で
ずんずん歩けば
幼い日のあたしが
笑いだす
ビルに映る
空より青い
空を見ていた
わたしの窓を
雲が流れる
君に指名されて
モノトーンの
景色に色が戻る
焼け野原に
一輪の花
日だまりに
チューリップ
声かけられて
しーんと
明るんでくる
紅い花水木
の群れ
水たまりに
姿映して
蝶と舞う
空っぽの
わたしだって
なれるだろう
野の花の
器ぐらいには
このいのちの
先にある
永遠に
花を
ひとひら
選ばれて
君という枠 抱きしめ
生きてゆく
愚痴は言わない
それがプライド
たとえ
嵐吹きすさび
大波寄せるとも
ただひとつ
杭があるなら
藤棚の下
リヤカー
整然と
竹箒載せて
一日の労働の証
足踏みマッサージ
する姿が
ばあさんみたい
と言う夫は
整骨院通い
すぐにも
ざーっと来そうな
午後4時
もうとっくに
降りこめられてる
体温と
同じ気温の
街を往く
こんな日もいつか
懐かしむだろう
深々と
蝉時雨の
森に
分け入っている
便りはまだない
秋の窓が開く頃
ざっと降り注ぐ
セミの合唱に
訳もなく
急きたてられている
失われるべきものは
失われてしまったが
光は
きらり
この手の中に
蝉の声
わたしの真中に
雨と一緒に
落ちてくる
夏は終章
雨音
BGMにして
ぬくぬくと
愛する人といる
何も要らない
雲ひとつなく
愛想なしの
空だ
想いも
飛ばせやしない
こんなにも
惹かれるからには
相似形の虚ろがあるのだろう
それこそがおそらく
生きている証
意味を
問わないと
決めたそばから
湧き上がる
意味を問わない意味
日だまりのベンチで
膝を合わせる
老人たちに
はらはらと
枯葉
アスファルトに
落下した枯葉
空に戻れず
土に還れず
風を待つ
言葉は
足早に
表面を行き交い
わたしのうちの川
淀み流れず